2012/04/13

明治大学世代間政策研究所との提携と新刊のお知らせ

ワカマニのメンバーの多くは現在、明治大学世代間政策研究所と連携して
活動の深化を図っています。

例えば、同研究所が3月に発刊した
『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)
の第1章はワカマニの私が執筆していますが、そこでは、政治経済学の視点
から、世代間を巡る問題を扱っています。

急速に少子高齢化が進む社会では、「世代」という切り口が重要となってきます。
なぜなら、政治経済の視点では、各エージェント(経済主体)は自らの効用(利益)
を最大化するように行動する世界を想定するケースも多いですが、各エージェント
には「寿命」が存在するからです。

「寿命」は、各エージェントが意思決定を行う時間的視野に強い影響を及ぼします。
例えば、平均寿命が85歳の場合、65歳の高齢者の時間的視野は20年(=85-65)
になりますが、25歳の若者の時間的視野は60年(=85-25)になるでしょう。

その場合、若い世代が多い人口構成をもつ世界の時間的視野(平均)は長いですが、少子高齢化が
進み、老齢世代が多い人口構成の世界における時間的視野(平均)は短くなっていきます。
しかも、高齢化の進展で、この時間的視野はこれから急速に短期化していくことになります。

すなわち、痛みを伴っても将来の日本のため、財政・社会保障改革(①増税、②社会保障削減、
③両方の組合せ)が必要と理解していても、政治的意思決定を行う社会の時間的視野が短くなっていく
場合、改革を先送りするのが一層合理的になっていく可能性があります。

厳密には、老齢世代が若い世代や将来世代の効用(利益)も考慮する「世代間利他主義」が成立
する場合、このような問題は起こりませんが、残念ながら各世代はそれほど利他的でないというのが、
大阪大学のチャールズ・ホリオカ教授をはじめ、多くの実証分析による結果でもあります。

改革の先送りは、公的債務(対GDP)の累増という形で、若い世代や将来世代の負担を高めていくのは
明らかです。これは一種の「民主主義の失敗」といっても過言ではないでしょう。

この動きを修正する一つの方法が、若い世代の政治力を高めていく試みです。大雑把には、各世代
の政治力は「その有権者数×投票率」から計算できますが、日本では、若者が多い都市部と老齢世代
が多い地方との間で、5倍にも及ぶ深刻な「一票の格差」が存在するため、老齢世代と若い世代の
政治力は、概ね以下のように表現することができるでしょう。

老齢世代の政治力÷若い世代の政治力

=[(老齢世代の有権者数×その投票率)÷(若い世代の有権者数×その投票率)]×一票の格差

=(老齢世代の有権者数÷若い世代の有権者数)(①)
×(老齢世代の投票率÷若い世代の投票率)(②)×一票の格差(③)

これを「老齢世代と若い世代の政治力に関する基本方程式」と呼ぶとしますと、この方程式で
「若い世代の政治力をどうやって高めていくか」という視点が最も重要になります。
例えば、①の是正が「ドメイン投票法」、③の是正が「一票の格差是正」や「世代別選挙区」であり、
これが冒頭の書籍第1章で扱っているテーマになります。

一橋大学経済研究所准教授 小黒一正


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