2012/04/02

我々が「税と社会保障の一体改革」に賛成する理由

城繁幸

野田内閣が進める税と社会保障の一体改革について、賛否両論が渦巻いている。
だが、良く聞かれる賛否両論それぞれについて、いくつか問題があるのも事実だ。
まず賛成意見についてだが、そもそも5%程度の消費税引き上げでは焼け石に水
であり、財政再建というには程遠い。せいぜい現在の社会保障制度が10年ほど
延命するだけの話だろう。

そして最大の問題点は、世代間格差の改善に踏み込むような抜本的解決策は
かけらも含まれていないという点だ。要するに、社会保障給付がカットされること
を恐れる高齢者向けのシルバーデモクラシーというのが実情だろう。

一方で「不況時に増税してはならない」という反対派のロジックにも根拠が無い。
97年消費税増税に伴う消費の落ち込みは、駆け込み需要の反動と山一ショックの
影響であるという事実は、すでに明確となっている。
むしろ最新の研究では、社会保障制度や構造改革の遅れにより、将来を悲観する
若年層の貯蓄率が(高齢者よりも)高まっているというデータもあり、改革の
遅れが若年層の消費抑制につながっている可能性が高い。

また、現在のEUを見ても明らかなように、不況であることを財政再建先延ばしの
口実に使うのはナンセンスだ。今日の一千兆円に上る債務残高は、過去20年間に
わたって無責任な先人達が「不況時の増税反対」と言いつつ、好況に変える努力
すら放棄し続けてきた結果である。

では、若者マニフェスト策定委員会としてのスタンスはどちらか。
結論から言えば、消極的賛成である。
とりあえず現状の社会保障制度を維持するため、増税は不可欠だ(基礎年金の
国庫負担分の捻出にすら難儀している)。
もし消費税引き上げがとん挫すれば、所得税や厚生年金保険料の引き上げという
形で、ほぼ確実に現役世代(中でもサラリーマン)が負担することになるだろう。
並行して社会保障カットの議論が進んでいるならともかく、そちらがまったく
不在な現在、ここは高齢者も含めた社会全体で負担する方向に議論を進めるべきだ。

そしてもう一つ、我々が増税に賛成する論拠がある。
今から2年前、若者マニフェスト策定委員会はAERAの消費税アンケートで
「最低30%への引き上げが望ましい」と回答した。そしてその後の
「世代間格差ってなんだ」の中では、(行革や子供手当分を除いて)当面消費税26%
への引き上げが望ましいと述べてきた。

リリースした直後は「30%なんて正気か!?」などと外野に散々言われたものだが、
最新の研究によれば、2017年度から速やかに引き上げを開始したとしても、必要な
消費税は33%、これを2022年にまで先送りすれば37.5%にまで跳ね上がるとする
結果が出された。※

着実に状況は悪化しているわけだ。
さらに注目すべきは、たった1年の先送りで、必要な消費税引き上げ幅が0.9%拡大
する点だろう。

今回の税と社会保障の一体改革には、世代間格差の是正も、制度自体の持続可能性も
対象としておらず、非常に不満の残る中身だ。ただ、丸ごとの先送りをやめ、
社会全体での負担の意思を見せてくれた点で、一応プラスには評価したい。
それが我々若者マニフェスト策定委員会のスタンスだ。

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※Braun, R. A. and Joines, D. (2011)“The Implications of a Greying Japan
for Public Policy,” mimeo.


カテゴリー: コラム

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