2010/11/11

むしろ国政以上に地方の方がシルバー・デモクラシーは激しい

人口が増加し経済が成長していた時代には、拡大するパイを分配する
ことで多くの人が便益を受けられたため世代間の利害対立のような
問題もクローズアップされてこなかった。

しかし、人口が減少し経済の成長が低下する中では、限られたパイを
公平かつ持続可能な形で配分するための「知恵」が求められる。
右肩上がりの人口と経済を前提とした今までの仕組みは成り立たなく
なっていくことは明らかであり、世代間格差の問題を放置すれば
現役・将来世代は過度な負担を強いられることとなる。

こうした中で、世代間格差の解消や持続可能な社会システムへの
転換がなされない背景には、シルバー・デモクラシーと言われる
必要以上に高齢者の声ばかりが反映される仕組みがある。
シルバー・デモクラシーについては、著書『世代間格差ってなんだ』
(PHP新書)や『18歳が政治を変える!』(現代人文社)でも、
0~30代の人口は全体の44.9%を占めながら、総投票者数に占める
割合はわずか23.5%であり、一方で60歳以上の人口割合は28.1%
でありながら投票者数に占める割合は40.4%にも上ることを紹介し、
こうした構造が、高齢者の声がより反映されやすい状況にあることを
指摘した。

こうしたシルバー・デモクラシーの構造は、国政だけの問題ではなく
むしろ投票率の低い地方選挙においては、より深刻な状況になって
くるということを紹介したい。
一例として、昨年11月に行われた千葉県市川市の市長選挙を見ていき
たい。千葉県市川市は、江戸川を挟んで東京という立地条件にある
人口約47万人のいわゆるベットタウンである。若年人口はまだ多いが
日中都内で働き、夜寝るといういわゆる千葉都民も多い土地柄である。

この市川市の市長選挙では、0~30代の若者の人口は全体の50.0%を
占めながら、総投票者数に占める割合はわずか23.6%にまで激減する。
一方で60歳以上の高齢者の人口割合は23.6%でありながら、投票者
数に占める割合は46.0%にも上る。投票率だけを見れば、約3倍の
違いである。

これは、決してこの選挙の特徴というわけではなく、とくに都市部に
おいては、地方選挙をメディアが報道することも少なく、情報を得る
機会がないため、関心がなく国政以上に地方選挙の投票率が上がる
ことはない。
また、当事者として便益を受けているという感覚がなく、仮に子育てを
していたとしても、地方政治でそれほど変わると思っていないという若者
も多いのではないだろうか。

一方で、高齢者は違う。かつては、公共施設の建設や道路整備などが花形
だったが、いまや歳出の中心は高齢者の福祉になりつつある。
既得権となった自分たちの便益を守るのはもちろん、少子高齢化の流れの
中で、高齢者向けの福祉への歳出が増えるのは当然といった風潮もあり、
右肩上がりの財政状況の時代と同様に、自分たちの便益を求める。
こうした状況は多かれ少なかれ、どこの自治体でも似たような状況では
ないだろうか。

例えば、ある自治体の事業の中に、老人医療法外援護という事業がある。
後期高齢者医療の被保険者のうち所得の低い方に対し、一部負担金に
ついても助成し無料にするというものだ。経済的弱者でもあり、これまで
社会のために貢献してきたお年寄りは、大切にしなければならないと
いう理念を持つことは悪いことだとは思わない。

しかし、それは本来、自治体の役目ではなく、国が対応すべき問題である。
国がそんなことは百も承知で、それでもなお、国の高齢者への医療費負担
を軽減させていくことで世代間格差を是正していこうと導入されたのが
後期高齢者医療制度である。

経済的弱者に対しては、前段で健康保険が所得比例配分で考慮されている
ことなどもあり、国ですらさらに保障する必要がないと判断している中
でのこうした対応は、持続可能な社会システムへの転換という視点からも
世代間格差の是正という側面からも明らかに逆行する動きといえる。
こうした動きは、地方自治体においては決して珍しいことではなく、
高齢者政策を国で見直ししても市単独事業として継続するなどといった
ことは、むしろ良くあることだ。

背景には、地方自治現場においては、国以上にこうしたシルバー・
デモクラシーが顕著だという問題がある。前段の選挙の投票者数の割合
の問題もあるが、その上に、地域団体も業界団体も、直接であれ政治家
を通じてであれ、働きかけてくる対象の多くは、常に高齢者であること
に大きな問題がある。

自治会や地域の声を聞き政策を修正し、後援会や地元からの声を受けた
議員たちが議会内外で修正を求める。つまり市民ニーズの反映をと声を
聞けば聞くほど、持続可能や世代間格差是正から遠ざかるという構造で
ある。

国においての世代間格差の是正のもちろんであるが、今後はこうした
地方の問題についても関心を持ってもらいながら、同世代の仲間が、
地元の現状を認識し、改善を求めて声を挙げていくことを期待したい。
そのためには、若い声を反映する仕組みを地域でつくっていく必要性
があるのは言うまでもないが、その問題は、またの機会で述べること
にしたい。

★今回のポイント
・投票者数割合の世代間格差などシルバー・デモクラシーの問題は
国政以上に地方の方が顕著
・世代間格差の是正に向けて国で見直ししても市単独事業として継続
していることも多い。
・国以上に政策立案過程において、若い人が加わっていくことが必要。

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