2010/09/23

行政は非実在青少年より非実在高齢者対策を急げ

都内で113歳の老人が、実は30年前に死亡していた事実が発覚し
たことで、全国で慌てた自治体による高齢者の所在確認ブームが
沸き起こった。8月5日現在、全国で行方不明の100歳以上老人は
57人に上り、中には30年以上にわたって数千万円もの年金が支給
されたケースもあるという。
筆者が気になったのは、そういった事実を話す行政の担当者が
いずれも淡々と事実を語っていたこと。そこには、悔しいとか、
もったいないとか、そういった生の感情はまったく感じられず、
まるで法律の条文を読み上げているかのような無機質さが感じら
れた。
「またお役所仕事か」の一言で片づけてしまうのは簡単だ。だが
窓口担当者の尻を叩いても、事態はそう大きくは変わらないだろ
う。問題の本質はもっと深いところにある。
彼らは何十年も昔に作られたシステムを、ただルーチン的に
こなしているだけなのだ。誰も疑問を持たずに、いや疑問は感じ
つつも、誰も変えようとはせずに、日々繰り返してきたのだろう。
そしてこのことは、結局はそういった政治を支持してきたという
点で、我々有権者にも当てはまる。実際、こういった不祥事に
めげることなく、サラリーマンは年金保険料を天引きされ続けて
きたわけだし、これからもそうするはずだ。
ただ、これ以上の“見て見ぬふり”は、さすがに限界だろう。
政府は現在、高齢者への給付をまかなうために、年金積立金の
取り崩しを検討中だという。04年改革の結果、現在144兆円ほど
存在する年金積立金は2050年までには500兆円にまで増加する設計
になっていたはずだ。つまり、積立金に手をつけるということは
厚労省のシミュレーションは完全な失敗であり、年金は遠くない
将来に行き詰まることが確実ということになる。一部の政党が
主張するように、事前積立をベースとした抜本的改革が必要だろう。
合わせて、受給者のチェック体制強化も求められる。長妻大臣は
110歳以上の高齢者の本人確認を表明しているが、110歳未満は
スルーというのはどう考えてもおかしい。平均寿命の80歳近辺に
こそ、多くの“非実在高齢者”が潜んでいる可能性が高いからだ。
というわけで、我々としてはすべての年金受給者に、1年ごとの
窓口手続き義務化等、何らかの形での本人確認プロセスを設ける
ことを要求したい。「所在を追跡する」のではなく「未申告者は
給付を停止する」だけであれば、行政側の負担は大きくは増えない
はずだ。
その上で、ゆくゆくは社会保障番号等、行政共通のIDを導入し、
納税、年金、住民票といった各サービスを一括管理の実現を目指
したい。これにより、管理コストの軽減にくわえ、給付付き税額控除
等の社会保障改革をサポートすることが可能となる。
少子高齢化や都市化によって、既に家族や地域といった共同体は
崩壊しつつある。新たな時代に合ったシステムの構築を急ぐべきだ。
★今回のポイント
・家族制度や地域共同体は薄れつつあるので、給付時の本人チェック
を強化する必要がある。
・社会保障番号のような一括管理IDは、管理コストの削減だけでなく
給付付き税額控除など新たなセーフティネット導入に欠かせない。
・いずれにせよ既存の年金制度は限界を迎えており、積立金の取り崩し
はその第一歩になる。

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