2008/10/29

「世代間格差と若者政策」シンポジウム記録

「世代間格差と若者政策」シンポジウム報告

世代間格差と若者政策で討論

若者が動かなければ日本は変わらない! ワカモノ・マニフェスト2008を発表!

NPO法人政策過程研究機構理事・BNJ運営委員 間中健介

10月25日(土)、Rightsの高橋亮平さん、小林庸平さんらの呼びかけに端を発したシンポジウム「世代間格差と若者政策-若者が動かなければ日本は変わらない!ワカモノ・マニフェスト始動!-」が開催され、行楽日和の心地よい週末にもかかわらず100名ほどが集まり、社会保障制度改革や労働問題など若者を取り巻くイシューについて議論を深めました。参加者の大半は20~30代の大学生や社会人ですが、高校生の姿や、各方面で活躍する中堅世代の方々の顔もありました。開催前からメディアの関心もいただき、当日も数名のメディアの方々が取材に訪れました。

はじめに
1871年、西洋文明の吸収と欧米列強との対等関係の構築を企図して政府が組織した総勢107名の岩倉遣欧使節団には、43名の留学生がいました。24歳の中江兆民、13歳の団琢磨、10歳の牧野伸顕のほか、6歳の津田梅子もこのなかにいました。列強に追いつくには、小手先の対策ではなく長期的な視野での国づくりが必要。明治政府の首脳には、そうした思いがあったのでしょう。彼らは日本の将来を若者に託しました。
ひるがえって現在の日本は、若者にとって“受難”の時代です。公的年金保険料や健康保険料の負担は増える。雇用環境も不安定。地域の産婦人科医や小児科医は減っている…。ここ数年、「世代間格差」が社会のイシューになっています。低成長のツケ、制度疲労のツケを若者が払わされている側面は確かに事実ではあります。
しかし、この状況を悲観し世代間対立を煽るのは賢明ではありません。世代の便益はトレードオフではあるものの、高齢世代と若者世代の双方が便益を享受できるような社会のあり方を提示していく責任が、私たちにはあります。
今回、そうした思いを共有するメンバーが集まり、シンポジウムを開催するに至りました。初回の打ち合わせはなんと9月27日(土)。この後、企画から会場選定、パネリストの選定と交渉、資料作成、進行の確認、集客告知を即座に進め、丸4週間でイベント開催にこぎつけました。この世代の底力と言えるでしょう。

パネリストからの問題提起

シンポジウムのトップバッターとしてプレゼンテーションをした小林さんは、若者は将来にわたって社会保障制度上の負担が増えるにもかかわらず、若年世代人口の減少により政治的な影響力が弱まっていくと主張。社会保障制度上の負担は1964年以降に産まれた世代ほど大きくなっていることや、年金給付倍率(年金給付÷保険料負担)は70歳代と約4倍の差があることをデータで示しました。政治的影響力についても、20~30代の投票者数は全体の23%ほどに留まっており、2050年にはこれが14%にまで低下するという見通しを紹介。このままでは若者不在での制度設計がされてしまう可能性に言及し、早期に右肩上がりを前提にした社会システムのもとで生じている世代間格差を認識し、高齢世代と若者世代の双方にとって持続可能な制度設計の必要性を訴えました。
つづいて、今回のシンポジウムのために仙台から駆けつけた『おまえが若者を語るな!』の著者・後藤和智さんが登場。そもそも「世代の枠組みを振りかざすことが問題」と語る後藤さんは、社会の特定世代や特定の職業集団を攻撃することによって社会が良くなったことはないと主張。“ロスジェネ世代”だけでなく、すべての世代が貧困に陥る可能性があることを指摘し、「世代間対立を煽ることでかえって政策が混乱する可能性」への危惧を唱えました。
問題提起の最後を締めくくったのは、人事コンサルタントで『若者はなぜ3年で辞めるのか?』の著者・城繁幸さん。講演に長けている城さんのプレゼンテーションは、やはり迫力十分です。
城さんはまず、日本の労働市場の“二重構造”に言及。中小企業の労働者には、労使間での取り決めが守られており退職金も制度化されている企業の労働者と、賃金も低く不安定な待遇をされている労働者の2パターンがあり、後者は“周辺的正社員”“擬似的正社員”に過ぎず、前者の雇用を維持するための調整弁になっていると指摘した。この状態では、前者に属する労働者が「正社員も厳しい。待遇改善してほしい」と訴えることで、後者の待遇がますます不安定化する。
加えて、フリーターの総数は「実は減っていない」とし、35歳以上の不安定な雇用の現実や、中高年の転職市場の閉鎖性、男女間の雇用の格差も指摘。これらの解決のために“労働ビッグバン”が必要であると説きました。
その柱は同一労働・同一賃金の実現。年功序列の賃金体系からこれに変わることで、年長フリーターも正社員になりやすくなり、中高年の転職も容易になり、勤務先にしがみつかなくても済むようになる。女性の雇用環境も安定する。真面目に働くほとんどの労働者にとって労働ビッグバンは望ましいと語りました。

パネルディスカッション
つづいて開かれたパネルディスカッションでは、世代間格差是正のための解決策の提示を意識しつつ討議を重ねました。
小林さんはスウェーデンにおけるLSU(スウェーデン全国青年組織協議会)と青少年庁の例をあげ、若者たちが研鑚して政策案をつくって政策決定過程にアプローチする努力と、政治の側がそれを受け止める努力の双方が必要と説きました。日本でもまず“若者政策担当大臣”を置くことができないかと投げかけました。
さらにRightsの持論とも言えるユース・デモクラシーとポリティカル・リテラシーについてコメント。投票に行くなど積極的に政治に参加し政治の側に若い世代の存在を認識させることと、「衆議院の定数は何人?」というような教育ではなく政治を自分たちで考えられるようなリテラシーを育てる教育を地道にやっていかなければならないと訴えました。
「最近、党派を超えて多くの政治家から、解雇規制の緩和に賛同する声を聞くようになった。メディアの論調も変わってきたと実感している」と語る城さんは、優秀な若者ほど短期で転職する傾向のなか、メガバンクをはじめ、若年層の声を吸い上げるようになった企業が増えたと言う。さらなる改革に向けては「人口が多い団塊ジュニアは最後の砦。改革にはあと5年が勝負。このままでは男性は過労死が増える。女性の社会進出は進まない。家庭は崩壊する…」と力説しました。
後藤さんは、「世代ではなく個々の状況をしっかり調査し科学的な提言を」と繰り返しつつ「急に何か新しいことをするのではなく、既存の制度をシッカリ運用していくことが必要」と語りました。

会場とのディスカッション
会場からも活発な質疑や主張が展開されました。19歳の女子大生からは「私たちはまだまだ投票できる状況じゃない。ポリティカルリテラシーをつけないといけない。でも、テレビで目につくのは政策の話よりも政局の話とか汚職の話ばかり」という、重要な問題提起がされました。大学生にとって、政策をわかりやすく理解できる場を用意しなければならないと、彼女の声を聞いた誰もが思ったに違いありません。

ワカモノ・マニフェスト提案
最後には、実行委員で練ってきた「ワカモノ・マニフェスト」を発表。今後、幅広く賛同者を募ってブラッシュアップさせていく考えが示され、閉会しました。
筆者は永田町で活動していた数年前より、常に「みんなの意見」とは何か?と考えさせられてきました。「補助金を増額してください。これはみんなの意見です」「みんなのために○○という事業を規制してください」。そう主張する人たちが提示する“提言書”には、たいてい美しい未来が描かれています。主張が実現したあかつきには「みんな」にとって素晴らしい未来になると…。
いま求められているのは美辞麗句ではなく、社会の発展と人々の幸せの実現です。そのために私たちは、幅広く社会の叡智を結集して、持続可能な社会のあり方を提示し実現しなければなりません。
「ワカモノ・マニフェスト」は単に若者の打算の産物ではなく、より崇高で、清冽な流れを持つものであり、背負う責任と、向けられる期待は、非常に大きいのです。

Rightsニュース  №21・22 より転載)


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